私のこれまでの人生の中で、最も印象に残っている小説を4作紹介します。
『新世界より』貴志 祐介
『新世界より』は私の人生の中で堂々の1位を飾る超大作です。もうこれを超える小説は現れないのではないか…と不安になってしまうくらい名作でした。
この小説は呪力という念力のような力を、みんなが持っているという設定のSF小説です。
前半の描写から想像できるのどかな田舎風景と、後で明かされる世界の陰湿さとのギャップがたまりません。
「一見ユートピアの中に潜む地獄」という落差が鮮明に描かれています。
その世界にしか住んでいない架空の生き物が出てきますが、食物連鎖まで考えられていて、世界観が作りこまれている部分が最もお気に入りポイントです。
濃厚な世界観の上に乗っかるストーリー展開も、もちろん面白い。文庫本3冊という分量を感じさせないストーリー捌きで一気読み必至です!
絶対に一度は読んでもらいたいと思います。
『ハーモニー』伊藤計劃
病気が駆逐された医療福祉社会で、自殺を試みる3人の少女が描かれています。
見せかけのユートピアは、ただただ絶望するしかないディストピアでした。
人間の意志とは何か、幸せとは何かを考えさせられる小説です。
余談ですが作者はがんと闘いながら執筆していたようです。闘病中に、病気が完全に排除された世界を批判的に描く点が非常に興味深いと思います。
『ジェノサイド』高野 和明
理系大学院生の研人と、アメリカ人の傭兵イエーガー。全く関係なく思われた2人の人生が、交互に描かれます。
最初は関係が見えなさ過ぎてストレスを感じるかもしれませんが、後半になっていくにつれストーリーの壮大さが増していき2人の接点が見えてくる構成になっています。
ストーリーの面白さもさることながら、構成の作り方が見事すぎて何度も読みました。
『一九八四年』
ビッグブラザーという権力者が監視する全体主義が浸透した社会を描いた作品です。
常に監視され、生活の隅々まで管理されます。
例えば日記を書くことも禁止され、結婚も離婚もセックスも自由にはできない。そんな世界で主人公のウィンストン・スミスはジュリアとの密会を重ねて……
行き過ぎたロシアを彷彿とさせる作風です。
個人的には同じ著者の作品である『動物農場』よりも好きな作品です。